千手観音は全珠院の本尊です。平成十五(2003)年本尊は新たに、千手観音の大仏となりました。それは槇田家三十二代目夫人の未来千年の幸福を祈って千年続く仏像をつくりたいとの発願からはじまりました。著名な大仏師、渡邊勢山氏が、樹齢三百年〜四百年の木曽ヒノキを使って造仏。水中乾燥法などの古来の技法や、漆塗りで材の強度を増し、さらに手打ちの金箔で漆を保護しているため、千年の歳月に十分耐え得るものです。複雑な構造をもつ千手観音像には大仏造立の例がほとんどなく、従来は、鎌倉時代の仏師・湛慶の作で知られる京都三十三間堂の丈六千手観音が最大のものでした。したがって、この像高4.2メートル、仏頭1.8メートルの仕上がりは、じつに750年ぶりに出現した大仏様式で日本一大きな千手観音です。
|